木曜第二研究所

見える範囲を、ちまちま書いております。

報告書「漂流の果てに」

今週のお題「SFといえば」

SF文学よりはSFアニメの方が馴染みが深く、本格派SFよりは少しフシギぐらいの方が仲がいい。

現実世界では到底味わえない出来事を通して、現実をサバイブしていく術や心意気を手にしていくのが心地よく、楽しいのがSFの魅力だよね。

昨年の夏アニメ「Sonny Boy」には衝撃を受けた。
少年少女、夏、果て、漂流、悲しみ、変化
SFアニメの主題歌に銀杏ボーイズをぶつけるセンスの良さや、SFでありながら悩みの本質は中学生の等身大のそれである。

ある日異世界に突如漂流してしまった子供たちが、それぞれの持つ超能力を使いながら
異世界から脱出を図る。


簡単に説明してしまうとこんな感じだけど、とにかく演出がいい。
アニメにしては声優の演技が抑えめであることや、音楽の使い時にかななり気を配っているからなのか、見ていていつの間にか隣で彼らを見ているように感じていく。
中学生の時、隣で話している子が会話の中で傷ついたことに、私だけが気づいてしまったときのような。そんな、目が離せなくなってしまう瞬間ばかりで、中学生という柔らかい彼らを懐かしいような、痛いような気持ちで見てしまった。

主人公の長良(ながら)くんは女の子二人と基本的に一緒にいるんだけど、

ハーレム的な感じは一切なくて、こういう男の子は確かに女の子の方が馬が合うよな

みたいな自然な形になっている点も後から思えば忌避感なく入り込めた要素だった。
少年少女に対して露骨な願望がなく、そこにいる少年少女だったのが好きだった。


夏アニメに相応しいさわやかさと切なさが詰まった12話で
異世界転生や日常ものといったで簡単でわかりやすい作品ばかりの深夜帯を漂流していた身として、難解であることの心地よさや、自分だけの作品観を与えてくれた本作は間違いなく良作と言えるだろう。
久しぶりにアニメ作品でいい意味で傷つけられた。
忘れることができなくて、でも傷に対して決してマイナスな感情を抱くことはない。

夏というSFの季節(個人的判断)のなかでも、とりわけぴったりな作品だろう。
サブスクで見れるので、もしこれを見てくれた人は、1話だけでも見てほしい。
特に音。結構トリッキーなことをしています。
どうぞよしなに